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鳥取の歴史発見トラベルマガジン。歴史から紐解く鳥取の文化遺産、観光地の新しい見方などご紹介します。

奥の院 一般社団法人 鳥取・日光400年プロジェクト

池田公お墨付きのソウルフード
質素倹約から生まれた「とうふちくわ」

鳥取藩政から生まれた“ロイヤル”なB級グルメ「とうふちくわ」

  鳥取県には古くから豆腐の文化が伝わっており、それというのも江戸時代、ときの鳥取藩主、池田光仲公が「魚の代わりに豆腐を食べなさい」とのお触れを出したことに始まる、と言われています。当時魚はまだ貴重で、とても庶民の口に入るものでなかったため、タンパク質 を補う代替品として豆腐を奨励したのです。そこで「豆腐で新しい料理ができないものか」と考案され、ちくわの原料にふんだんに豆腐を入れ生まれた食べ物が、この「とうふちくわ」です。

江戸時代の“機能系”タンパク源

  「とうふちくわ」は、味豆腐と魚のすり身を混ぜ合わせた、柔らかくまろやかな味わいの伝統食品。江戸時代から続く鳥取の伝統の味であると同時に、豆腐はもちろん、魚は肉に比べてヘルシーで脂肪分がたまりにくいので、最近流行のメタボリックシンドロームに悩む人にもピッタリな一品といえるかもしれません。まさに機能系郷土料理。質素倹約健康増進のために生まれた食文化だけあって、低カロリー低脂肪高タンパクな上に豆腐に含まれる健康成分がぎっしりつまった健康美容食でもある。

まるかじりOK! 庶民のポケメシ。

 皿に盛り食卓を飾る、わさび醤油で刺身風に頂く、焼いても煮ても最高の酒の肴になる…と、とにかく重宝する食材であることはもちろん、「携帯できる」「ほうばれる」という、現代のポケメシのような機能で当時の庶民の胃袋を支えていた様子が想像されます。まさに鳥取が誇る万能食材。機能系、機能系と言えど天然素材だから毎日でも食べられる。温泉と並び、庶民の毎日を支える、城下町を中心にみんなに愛された鳥取のコモデティ・フードなのです。現代の鳥取では、冠婚葬祭のみならず何かと人の集う場には必ずとうふ竹輪盛りが出る、そんな定番食材です。

その味は「唯一無二」。B級グルメの代表選手

 噛みしめる度ふんわりしっかり豆腐の香り。豆腐のやさしい舌触りの中に、魚のうまみをしっかりと残す味。質素倹約を目指した結果、グルメの域へと到達してしまった感のあるソウルフードです。そして庶民に普及し、今ではB1グランプリに出場するほどの、地元代表格の郷土料理に。質素な生活の中から生まれたイノベーション。とうふならではのぷるんとした艶やかな白い肌と食感。庶民の中で介され続けるに値するその「やみつき」感は、一度食べればあなたも納得することでしょう。保存も効いてお土産にも最適です。

その台所事情を紐解けば、鳥取の歴史が見えてくる

 鳥取城下は秀吉の中国攻めの「渇え殺し」などでも有名な合戦の舞台。戦乱につぐ戦乱の歴史のなか、都市としてはもちろん農耕地としても発展後進国でした。また次々に変わる城主への民衆の忠誠度は低く、年貢の徴収が困難な土地柄でもありました。とどめに徳川家と由縁の深い池田家故の32万石という大食扶持。質素倹約と健康増進の両立は必須課題であったことでしょう。そのような困難な食事情においての町人達の考案は、現代の地方創生に通じるものがあります。特に鳥取には陶芸や生活品を中心に花開いた民芸運動の歴史もあり、生活の中の衣食住・全方位に渡る美(味わい)と機能性の追求に一目置かれています。そんな平素存在する探究心によって磨かれ、現代に至るまで鳥取の食文化として発展した「とうふちくわ」。その白く艶やかな切口には、鳥取の歴史も練り込まれているのです。
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地図は『鳥取市要覧』(大正15年・鳥取市発行)から転載。(鳥取市市民図書館蔵)